容疑者の証明写真

鬱を治す方法を知っている。

鬱を治す方法を。

それは。

変化だ。

大きな変化。

それも自分がやりたい事をやるのではなく。

自分が普段やらないこと。

やりたくないこと。

それをする事が大事である。

だが。

鬱で思考を止めていた俺が。

自ら進んで行動することはない。

鬱なんだから。

止まっているんだから。

外的要因がない限り、俺は動けないだろう。

その外的要因として、組織はあの人物を俺に送り込んだ。

そう。

その名は。

あずきバーさん。

あずきバーさんとは、ニコ生で出会った俺が26歳の時初めて女の子に告白した女性。

初めてニコ生の配信に来てくれたのは2014年の冬くらいだっただろうか?

24歳の時だった。

あずきバーさんは、元埼玉のナンバーワンキャバ嬢。

初めて会った当時の年齢は確か、37歳くらいだっただろうか。

しかし、歳を感じさせない美貌で俺はすぐ一目惚れしてしまった。

そんなあずきバーさんは、キャバ嬢の仕事を通じて、芸能関係者と繋がった。

俺の元働いていた会社とも繋がっていて。

キャバ嬢を引退したあずきバーさんは、俺みたいな鬱状態で思考止めている人間を治すのが仕事であると俺は思っていた。

元会社組織の狙いは、まず、質問力のない仕事のできない俺をパワハラで一旦わざと鬱にして、休職させる。

休職させてのち、鬱になった俺にあずきバーさんのような綺麗な女性を派遣し、恋をさせる。

恋をした俺の情緒を動かして、鬱を治し、復活した俺を再び雇うことで、本当に使える人物にすると言った流れである。

しかし、復活してもまだ学生気分が抜けなければ、芸能人にさせられてしまう、という二択なのである。

俺は、組織のハニートラップにまんまと引っかかった。

あずきさんのために、自分を磨いた。

急激に痩せたし。

化粧も覚えた。

男の化粧なんて俺はやりたくない。

本来なら。

小学校時代から服を買ったり、オシャレをしたりする友達をみて、俺は思った。

俺はカッコつけないカッコ良さを求めたい。

素のカッコ良さ。

なんともオシャレをし、カッコつけることが恥ずかしいと思い抵抗があった。

俺はどんどん時代の流行のファッションに置いてかれてしまった。

でも、今は、やりたくないけど、あずきさんに振り向いてほしくて、頑張んなきゃと思った。

あずきさんは、ゴールデンボンバーの鬼龍院翔や、氣志團の綾小路翔、筋肉少女隊の大槻ケンヂが好きで。

オシャレのしない俺としては、全く別ベクトルの人達。

俺はその人達を参考に化粧をしようと思った。

筋肉少女隊の大槻ケンヂ。

まずこれは無理だ。

騎士団の綾小路翔も無理。

残す選択肢として、せいぜい真似出来て鬼龍院翔だろう。

俺は鬼龍院翔の画像を見て。

出来るだけ自分を鬼龍院翔に近づけたが。

無理だった。

だけど、やったことがない化粧がとても楽しく感じた。

なんだろう。

この経験した事のないこの気持ち。

嬉しい。

楽しい。

大好き。

この気持ち。

化粧して、オシャレな服を買って、町中やお店の中を歩く。

心が高揚した。

町中の人や。

すれ違う人。

全ての人が自分を注目してくれている。

ものすごく自分に自信がみなぎってきた。

出来るだけ、正直に生きようと心がけている俺だが、化粧という嘘を身につけて自信を持つことにより、きっと鬱は良くなる。

こういう仕組みなんだと。

どんどんオシャレに目覚め始めた。

服が欲しい。

オシャレをしたい。

カッコよくなりたい。

みんなが自分を見てくれてる。

俺は、そんな有頂天な気持ちがしばらく続いた。

しかし。

ある日のこと。

注目を浴び続ける自分に、次第に怖さや辛さ苦しさを感じるようになった。

女の子が近づいてくるのが怖い。

パチンコを打ってても綺麗な女性が隣に座ってきたら怖いと感じでしまう。

綺麗な女性の隣の台を打ちたいと思っても打てない。

これは、トリカブトの論理でずっと女の子を避けていた。

もう我慢の限界だった。

ストレスがやばい。

辛さがやばい。

誰にも言えないが、自分がカッコ良すぎてやばいって。

本当にそう思った。

俺は、意を決した。

せっかくオシャレをしたのに、気づいたら美容室にいた。

美容室の中で、店員さんに言う。

もうバッサリ髪坊主にしてくださいと。

全てをリセットかけようと思った。

オシャレな髪型はもうしない。

オシャレな服装はもうしない。

そして、俺は坊主にし、しばらくパチンコ店にも行かないと決意した。

もう俺は、学生だ。

高校生くらいの子供。

ゲームセンターで遊ぼう!

そう考え、毎日入り浸るようにゲームセンターへ行った。

平日の昼のゲームセンターは中高生はあまりいない。

学校の時間だからだ。

俺は、ゲームセンターで様々な行動をとった。

同じ行動とか、やりたい行動とかは。

そんな行動はとった時点で普通のこと。

本当に楽しいと思えることって、案外やりたくない行動のなかにあるのではないか。

経験のないことは、新鮮な気持ちになれる。

よし。

やりたくない行動をとろう。

俺は、何をやりやくないのだろう。

ムシキング。

興味ない。

よし、やろう。

クワガタのカードが手に入った。

自分で角度を決め画像がカードになる。

こんなこと出来るのか。

時代が進んだことを感じる。

よし、ドラゴンボールのカードのゲーム。

全くこれもやりたくない。

でも、カードをたくさん手に入れ、隣にいる保育園児と、カードの取り引きをするところを妄想して。

その妄想が楽しかった。

次にプリキュアのカードゲームだ。

俺は、プリキュアのカードゲームをやることにした。

正直絶対こんなちっちゃな女の子がやるようなゲームはやりたくない。

対象年齢は保育園児か、小学校低学年くらいか。

俺みたいな26歳のおじさんが手に出していいゲームではない。

子連れならわかるが。

独身男性の俺がやると、下手すると通報されかれないかもしれない。

しかし、俺はちゃんと捕まる覚悟もって、そのゲームに挑んだ。

もう全くな内容も覚えていない。

どんなゲームだったのか。

ゲームが終わり、よくわからないキャラクターのカードが出てきた。

俺は、そのカードを手に入れて。

俺はこのカードが欲しかったのだろうか?

自問自答した。

ゆくゆくはきっと欲しい気持ちになるだろう。

というかなりたいな。

ならなくちゃ。

絶対なってやる。

そう思った。

未来の妄想で、自分が女装し、そのカードゲームをし、ゲーセンにきていた、ちっちゃい女の子と仲良くなっている妄想をした。

仲良くなったが、その子のお母さんが、自分の娘に、

『あの人、女の子の格好してるけど、実は、男の子なの……』

そう打ち明けている妄想をしていた。

完全に危ない人だ。

でも、俺の行動は止まらない。

もっと。

もっとやりたくないことはないだろうか。

きわめつけが。

プリクラ。

これは、さすがに無理だ。

やりたくない。

というか、今知ったが、成人男性の一人プリクラは犯罪だった気がする。

でも、俺は越えなきゃいけない壁がある。

組織が俺を狙ってる。

組織が何か期待してる。

俺がなにか面白いことしないかなって。

俺はその期待に、俺は答えなきゃって

今日は、人気のない平日の昼。

今ならこっそり、プリクラを撮れば。

誰にもばれないかもしれない。

俺は、決心した。

一人プリクラをとることを。

勇気をだして、いを決してプリクラ機のまえにきた。

完全に危ない中年男性。

まず、プリクラのとりかたが分からない。

当たり前だが、一人でプリクラなんて撮ったことがないのだから。

無理もない。

俺は、なんとか金を入れ、説明に促されながら、たどたどしく、一人でプリクラを撮った。

プリクラを撮るとき、普通に笑顔でピースなんてしない。

そんなのは興ざめ。

組織が喜ぶようなプリにすべし。

俺は、プリクラなのに、週刊誌にのってそうな、自分の手で自分の顔を隠すような画像をとったり。

免許証にのるような、証明写真のような真顔でとったり。

あるいわ、指名手配犯のような、悪魔の表情で、プリクラをとったりで。

俺は、いいものが撮れた。

と自分で思った。

撮れたプリクラはもう、オシャレで可愛いプリクラではない。

容疑者の証明写真のような、奇妙な怖いプリクラである。

俺は、すぐプリクラ機の正面の下からプリクラが出てくると思っていた。

昔の時代はそうだったから。

でも、今はどうやら違うようだ。

どこから出てくるのか?

俺は、あたりを見渡した。

正面。後ろ。あるいわ上を向く。

プリ機の前で、どこから出てくるのかわからず、結局異次元へプリは消えたと思い、その場を去った。

しかし、去る前にいつもやっているポップンミュージックをやることにした。

プリクラ機の近くに、ポップンミュージックがあった。

聴きたくない曲を弾くか。

聴きたい曲を弾くか。

俺は、聴きたくない自分の感性の逆ベクトルの曲を引いた。

あずきさんが好きだった筋肉少女隊の曲を。

嫌いだったはずの曲だったが……

なぜか。

なぜか心地よい。

そうか。

感性が。

変わりつつある。

動きつつある。

坊主でも、これまで化粧して自分に嘘をついていたモードだったから。

だから、この曲が心地よく感じるのではないか。

じゃあ大好きなパーキッツを引こう。

パーキッツの曲を引いた。

今度は、違和感。

言いあらわせないストレス。

何故だろう。

昔から大好きで、自分の好きの象徴であった、パーキッツの曲。

どんどん自分の感性が流されていくのを感じた。

いやだ。

そっちには、進みたくない。

やっぱり今まで通りでいい。

俺は思った。

そのときだった。

カチャン。

と斜め後ろのほうから音がした。

プリクラ機を離れて、5,6分くらいたったくらいだろうか。

なんとプリクラ機の側面の方の受け口に、俺のプリクラが落ちていた。

よこについているのか。

あとあとわかったが。

今は、けっこう受け口が横についていて、ペイントなどを施して、オシャレに楽しく装飾することが出来るようだ。

俺は、それを全く知らなかった。

俺は、その画像が放置されたまま、よく時間切れで、このプリが誰にもみつからなかった状態で落ちてきたことに命拾いした。

危なかったぜ、と。

もし、地元の女子校生に見つかっていたら。

おれは、完全に変質者の危ない人だ。

まぁ、既に危ないひとなんだが。

みつからなかったことに俺は神さまに感謝した。

そんなこんなで、プリクラを回収し、俺は、あるところへ向かった。

そうパチ屋である。

久しぶりにパチ屋へ行こう。

俺は、車を走らせた。

走っている最中。

俺は、この世で一番恐怖を感じる生物が上空を飛び、車の窓にぶつかり、ワイパーに挟まった。

そう。

それは。

スズメバチである。

俺はスズメバチが大嫌いである。

刺されたら運が悪ければ死ぬ。

一度だけ、年に4回ハチに刺されたことがある。

おれは、それ以降ハチイコール俺を刺すと思っている。

スズメバチに刺される訳にはいかない。

俺は、パチ屋の駐車場にいた。

ワイパーに挟まったハチは生きている。

少し動いている。

俺は恐怖で、車の中から出れなかった。

スズメバチもまるで意思をもっているかのように、こちら睨んでいる。

まさか。

これは。

このスズメバチまで組織の仕業なのかもしれない。

まるで、ドローンのように、誰かが飛ばして操作をしているのではないかと。

俺は、まさかと思った。

ここまで、科学の技術が進歩しているなんて。

驚いた。

もうそう断定していた。

パチ屋へ逃げようとした。

ドアをゆっくりと開けようとするが。

ハチが今にも動き出し、飛び出しそうに、こちらを狙っているようで。

もうこのハチはただのハチじゃない。

組織が用意したもの。

それをモニタリングしている。

俺は、怖くなった。

その事実。

命の危険性。

この状況を打破する方法はどうすればいいか。

まさか。

組織が期待することをやるということ。

ようするに、今俺がやりたくないことをやれば、組織はその姿を見て喜ぶ。

では、やりたくないこととはなんだ。

そこでふと思い出す。

さっき撮ったプリクラ。

容疑者の証明写真を。

俺は、まさか……と思い、ワイパーの近くのスズメバチがいるところにその写真を置いた。

窓際なので外からすると、その写真は見えてしまう。

しかし、俺がそのプリクラを置くと、

スズメバチはなんだか、落ちついた感じで、大人しくなる。

俺は、そのプリクラを誰かに見られるわけにはいかなかった。

だって恥ずかしいもん。

こんな外から見えるところ置くなんて。

恥ずかしくて死ぬ。

でも、組織はそれを期待している。

俺は、試しにそのプリクラを回収しようと手を伸ばした。

すると、またスズメバチが動きだし、こちらを威嚇する。

俺は、もう、確信し、あきらめ言った。

『わかったよぉ、ここに置いとくから』

言うとスズメバチは納得したようで、ぴたりと動かなくなった。

そのあと、車をゆっくり出て、パチ屋の店内に入った。

きっと、俺の写真はみんなに見られてしまっているだろう。

というか、本当に恐ろしい時代だ。

スズメバチが遠隔操作できる時代がくるなんて。

そのあと、また車に戻ったが、スズメバチはやはりいた。

車の乗り、家へと帰り、またおそるおそる、家の中へ戻った。

結局スズメバチは、ワイパーに挟まったまま。

プリクラも一日いっぱいそこにおいておいた。

家の玄関の前の車の中に。

そして数日後。

ワイパーのスズメバチを見た。

死んでいた。

死んだこと確認し。

恐る恐る、ピンセットでスズメバチを回収した。

死んでいてもやはり怖いが、俺は、そのスズメバチを家の中へ持ち帰り、新聞紙をひいて、茶の間のテーブルに置いた。

俺が、きになっていたことを明らかにするため。

組織が用意したであろうこのスズメバチ。

スズメバチの体内に必ず、電子的な部品があるはず。

組織の手がかりがつかめると思い。

スズメバチの解剖が始まった。

しかし。

中を開けても、何もなかった。

電子的部品も。

それはおろか、なんか、本当に生き物なのかというくらい、なにもなく逆に怪しい気持ちになった。

なんだ、なにもないのか。

俺は、がっかりした。

組織の手がかりとなるものを探りたくて、解剖したのに。

俺は、肩をおとした。

そんなことをして、ショックを受けていると。

おばあちゃんが普段寝ている仏壇部屋から、おばあちゃんが出てきた。

俺にゆっくりと近づき、朗らかな穏やかな感じで俺に言う。

『ゆうきぃ……ハチがいるんだけど……』

言われ、俺は、スズメバチを解体した弔いか何か疑ったが、まぁどうせいつも家のどこかから入ってくるクマバチとかだろ、と思い。

クマバチは俺はさほど怖くない。

殺虫剤をもって、ばあちゃんの部屋に行った。

すると、ばあちゃんの枕元に巨大なスズメバチがいました。


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