【ラノベ】「退屈嫌いの戦闘狂-神に気に入られ後継者となった少年-」

この度、配信アプリspoonで知り合ったリスナーさんのRebootさんの小説作品をこの「創作登校学園サイト」に載せさせていただけることになりました。ご協力ありがとうございました。また、他の読者の方々も、どしどし掲載依頼お待ちしております!
                                    by管理人ワトソンより

1話 「退屈に好かれた高校生」 作者 Rebootさん

  自分のいる世界がつまらないと感じた。
  とにかく何もかもがつまらない、面白いと感じるものが皆無だった。
  退屈という厄介者を追い払うにはどうするか?方法はいくつもあるかもしれない。

  例えば1つ目、共に泣き笑い時に喧嘩もする友人と一緒にいる。その友人の性別、友人と何をするのかそんなもの正直何でもいい。ただ友人の数が多ければ多いほど退屈の出る幕などない。

  2つ目、どんな時にでも没頭でき生き甲斐とも言える趣味にその時間を費やす、例え独りであっても自分自身の生き甲斐があれば人はなんとかやっていける。

「…つまんねぇ」

  俺、烏鷺辛(うろかのと)が空を見上げながらボソッとそうつぶやいた。
  自分の身にまとわりつく退屈を払いのけようとつぶやく台詞だったが効果はいまひとつない。
 
「はぁ……」

  退屈が隣人と化したことは今に始まった事じゃない。
  かといってこのまま長い付き合いになるのかと思うとただただ憂鬱になる。
  どうしたものかとため息をつきながら懐のタバコを咥え出す。
 
「チッ…んだよこのライター切れてんじゃねぇかよ」

  俺はほんとうに退屈だったのだ。
  理由を簡単に言えば退屈を消し飛ばす方法その1、その2を使うことが出来ないからだ。
  方法その1が使えないというのは至って単純
 “俺に友達がいないから”だ。
  その理由はタバコを咥えては火をつけようとする、15歳の高校1年生らしからぬ行動が理由…というわけではない。
  勿論それもあるかもしれないが他にも訳がある。

「寂しそうじゃねぇか烏鷺ォ〜」
「寂しいなら俺たちが相手してやるぜ〜」

  100円ライターで火をつけようとしている俺の前に現れたのは自分と同じ制服を着た男子4人、似ているが他校の校章を付けている男子4人。
  計8人、そして物騒な事に全員鉄パイプを手にしている。

「…懲りねえなお前ら」

  他校はともかく自分と同じ制服を着ている4人は知っている。
  幾度となくブチのめして来たモブ共だ。
  名前は知らない。
  何故なら覚える気にもならないからだ。

「要件は分かってるよなァ〜」
「知らね、とっとと帰れ」
「調子こいてんじゃねぇぞゴルァッ!!!」

  鉄パイプを力任せにアスファルトに叩きつけながら1人が声を荒げる。
  一般人ならそれだけでかなりの脅しになるが俺にはほぼほぼ意味がない。
  せいぜい振動で耳の中が痒くなるくらいだ。

「おい、コイツがほんとに番長やった奴なのか」

  首を傾げながら他校の生徒1人が口を挟む。

「あー、そうだコイツがやった」

  そのやり取りで要件のひとつが見えた、あくまでもほんの1部なのであろうが。

「様するにまーたつまんねぇ理由で来たか、番長とかそんなもん知らねーから勝手にしろよ」

  まるで興味がないと言わんばかりにそっぽ向くが気に食わないのか再び鉄パイプをアスファルトに叩きつける。
  地味に耳にくるので割とこっちもイラッとして来た。

「この人数見てみろやァッ!!大口叩くのも今日が最後にしてやる!!!」

  声を荒げる1人が鉄パイプを振り上げる。
  振り上げられた鉄パイプがすぐに振り下ろされた。
 ただその鉄パイプが俺の頭をカチ割ることはなかった。

「なっ!?」

 全力で振り下ろされた鉄パイプの先端を手に収めた俺はもう片方の拳で風を切った。
 ボクサー顔負けの体重が乗ったストレートの着地点は顔面、鼻先だった。
  角度がストライクだったのか両鼻から血が流れ、口からも血が流れた。

  感触的に盛大に口内を切ったのだろうが歯は無事、しかし鼻に関しては恐らく骨が折れたのだろう。

「…スライムに会心の一撃見舞ったって意味ねえんだよ。はよ帰れ、マジで」

  クリティカルな一発を食らったモブをわざわざ最弱モンスターに例えながら奪い取った鉄パイプを担ぐ。
  ちなみにこういう時は俺は必ず忠告はする。
言い方が悪い?こういう場合は言い方などほとんど意味ない。

「手ェ出したぞッ!!」
「やっちまえ!!!」

  何故なら忠告などはなから聞いてないからだ。
  忠告しようとしなかろうとこういう奴らは喧嘩を仕掛けてくるのだ。
  まさにめんどくさいの極みである。
  その上、別に俺は喧嘩が好きなわけでもない。
  ほんとに迷惑な話だ。
 
「はぁ…」

  何度目か分からない溜息をついた。
  ここまで来ればこの数分間だけでも退屈凌ぎになる事しか願わなかった。
  身体の使い方をまるで知らないモブ共が鉄パイプを振り上げ向かってくる、内1人の攻撃が俺の身に届こうとしていた。
  ただ振りが単調が故に軌道が丸わかり。
  真っ直ぐ振り下ろされそうになる一撃に俺はタバコを捨てて前転をして回避と同時に囲みを抜けた。

「抜けたぞ!!ブッ殺せ!!」

  囲みを抜けた俺に1番近い他校の生徒が殴りかかる。
  他の奴と比べて体格が厳つい、あの一撃は俺でも骨折はしかねない。
  ただガタイが良くても人間には必ず弱点はある、例外はない。
  前転した俺は起き上がる前に右手を軸としながらそいつに水面蹴りをお見舞いする。
  俺の体が回転しながら厳つい生徒の足を蹴り払ったことでそいつがバランスを崩し倒れる。

「跳んで避けろよ鈍チン」

  宙に滞空する刹那にバランスを崩した厳つい生徒に続けて低い体勢のまま蹴り飛ばす。
  蹴り飛ばされた厳つい生徒の体は後ろに飛び4人のモブを巻き込んだ。

「よっ…と」

  本来なら前転の反動で起き上がったが、起きずに低い体勢のまま攻撃に移ったため俺は今アスファルトの上に横になってる状態だ。
  だから手に持った鉄パイプを一旦手放して手を耳の横に持っていき地面に付ける。
  それから足を上半身に引きつけて反動をつけて起き上がった。
  首跳ね起き(ネックスプリング)と呼ばれているこれらの芸当は身軽な俺には造作もない。

「やっぱ退屈でしかねえからとっとと終わらせんぞ」

  首をポキポキと骨を鳴らしながら一旦手放した鉄パイプを拾い上げた。
  鉄パイプを拾い上げて俺は周りのモブとは違うと言わんばかりに両手で鉄パイプを持ち真っ直ぐ構えた。
  その構えは紛れもなく剣道もとい剣術の構え以外何物でもなかった。
  ちなみに俺は喧嘩に獲物は使わないなんて考え方は持っていない、相手が素手ならともかく平然と武器を持ち尚且つ数が多いなら遠慮はしないというだけだ。

「さあて、行くぞー」

  その声こそやる気の感じられない声音であったが踏み込んでからは一切容赦しなかった。
  脇目も振らず猪突猛進。
 1番手前の他校の生徒の胴に電光石火の鉄パイプが捻じ込まれた。

「ぐふ…!」

  短く呻きながらその場に崩れ落ちる。

  綺麗に鉄パイプが鳩尾に捻じ込まれたのだろう、空きっ腹でなければこの場で吐瀉したかもしれないが今はどうでもいい、コイツはもう用済みだ。

  1人片付け流れ作業のようにターゲットを横にずらし鉄パイプを握る腕を狙う。
  俺は狙いを外さず横に居たモブの腕を打ち据える。

「あああああああああッ!!!」

  武器を落として打ち込まれた腕を抱えながらのたうちまわる。
  本気とはいえ感触的には骨は折ってない、ヒビが入ったぐらいだと思うが痛みでそれどころではないようだった。

「うるせぇッ!!」

  首の後ろに力任せに手刀を打ち込み早々に意識を刈り取り周りを確認した。
  1番初っ端に殴り飛ばしたモブにパイプと手刀で黙らせたモブで3人は確実に黙らせた。
  残り5人の状況を確認したがもう鉄パイプは持ってる理由がなくなった。

「おー、面白いこともあるな」

  さっき蹴り飛ばした厳つい生徒を除いて残り4人はそいつの下敷きとなり既に伸びていた。
  ガタイが良かったその分余程体重が重かったのだろう。
正直これはご愁傷様だ。

「舐めるなッ…!!」

 終わったと思い鉄パイプを放り投げる俺に1番最初に殴り飛ばしたモブが起き上がった。

「おいおい、鼻が曲がっても続けんのかよ」

 口と鼻から血を垂れ流しにするモブに呆れ返った。
 こういう諦めない精神、不屈の闘志のようなものは俺は嫌いじゃない。むしろ感心はする。
 ただ格下すぎる相手のこれは正直面倒くさい。
というかウザい。

「テメエをシメて…俺がガッコの上に立つんだ…」

 それを聞いて俺は心の底から呆れ返った。
 くだらなさ過ぎる上に、興味がないと言ってるにも関わらずこの一辺倒だからだ。
 迷惑すぎる。

「よし、わかった。それなら特別にガチで相手してやるよ」

 だからこそ、もう本気で潰して嚙みつけないようにしてやろうと思い、手のひらを上に向け手招きをする。 

「オラアアアアツ!!」

 拳を作り鼻が曲がったモブが殴りかかる。
 真っ直ぐに向かってくるストレートを側面から払って軌道をズラす。
 俺の頬の横を掠め距離を詰めたモブの腹部に掌底打ちをねじ込む。
 顔面に入れたさっきのストレートと同じく腕力に体重を上乗せした打撃に相手が仰け反った。

「オラ来いよ」
 
 一撃入れても俺はまだかかってこいと挑発した。
 喧嘩を売らせないようにしたいのだ、まだまだ足りない。

 掌底打ちの痛みがある程度引き再び俺に向かってくる。
 右足を軸に左足を上げて蹴りを入れようとしていた。目線を考えると脇腹を狙っている。
避ける、もしくは膝でブロックする選択肢もあるが敢えて脇腹を開けた。

「よっ…と」

狙い通りにモブの蹴りが俺の脇腹に入り込む。
脇腹の衝撃から少し息を吐き出したが蹴りと同時にその足をキャッチしたためダメージは緩和された。

「さあ、どうすんだ?」

足を掴まれ片足立ちになるモブに俺はバカにするかのように問いかけた。
足を引き抜こうとするが俺はガッチリホールドしてる。

「ダメだな、時間切れだ」

まるで組手稽古の先生のように足首を振って相手の左足を払った。
バランスを崩した同時に掴んでいた右足をパッと離したためモブ男は背中から落下する。

「はぁ…やっぱ雑魚じゃねえか」

こりゃダメだと見下す俺は倒れるモブ男に背を向けて歩き出した。
喧嘩は終わったと退散しようと背中を見せる。
俺が油断していると思ったのか少し離れてからムクリと起き上がりモブ男が俺に向かって走ってきた。

「死ねや烏鷺ッ!!」

手に持っていたのはナイフだった。
柄尻に手を添えて切っ先を向ける。
そのまま体当たりすれば笑えない事になるが、そのモブ男はそんな事を忘れているかのように真っ直ぐ向かってきていた。

ー本当につまんねえな…

俺は全部気付いていた。
さっきの掌底打ちでナイフらしきものの感触を感じ、コケにしてやればそれを抜くという事も。

ただやる事がワンパターン過ぎて心底落胆した。
もっとやりようがあるだろう。
投げるとか、飛ばすとか。

ーあ、全部同じか

そうしてる内に距離が詰まってる事に気づく。
振り返ってのカウンターはもう間に合わない、腹に風穴が開くのが目に見えてる。
だから振り向かない。
少しだけ横にずれ顔の位置であろう高さに肘打ちを入れる。

「ブッ!」

手応えと声でカウンターの成功が分かった。
不意のしっぺ返しに構えていたナイフは緩んでいるであろうと続けて動く。
詰められた距離を押し戻すべくモブ男の腹部に後ろ蹴りを食らわせる。

振り返ると当たりどころが良かったのかナイフを取り落として膝をついた。
曲がった鼻を含めて顔に肘打ちを喰らい恐らく鳩尾に蹴りが入ったのだろうもう襲いかかるほどの気力はないようにも思える。

「ほら、ラスト行くぞ」

しかし虫の息になりかけたモブ男にそう言いながら俺は数歩後ろに下がる。
無慈悲だが売られた喧嘩だ、それに刃物まで持ち出したのだ。
容赦しない。

離れた俺は片膝をつくモブ男に視点を合わせて地面を蹴る。
駆け足で迫り途中でまた地面を蹴る。
自分の体を前に回転させエアリアルツイストと呼ばれる技を仕掛けた。

本来はブレイクダンスなどのアクロバット技。
しかし頭上から降る着地の為の足は重力が乗っている。
ただのカカト落としよりも強力だ。

両足のつま先がモブ男の脳天を直撃する。
着地した俺はモブ男を一瞥すると当然だがモブ男は倒れ臥していた。
鼻以外は骨に異常はない、全治にも長くはかからないだろう。

  とにかく俺の喧嘩の相手は居なくなった。こんな退屈な場所にいる理由はない。
  早々に消えようと思ったがちょっとしたことを思い出して最初に殴り飛ばしたモブに近づいた。
  痛みに呻く複数の声を聞きながら俺は殴り飛ばした相手の胸ポケットを探った。
  側からみれば金でも奪うかのようにも見えるだろうが俺はカツアゲじみた事は今までした事はない。

「あった」

  探し物を探し当てた俺はさっき捨てたタバコを拾い咥える。
  そして今度は探し当てたライターで火を付けて煙を吸い込んだ。

  名前は知らない相手であっても、そいつがタバコを吸うか吸わないかは覚えている。
  丁度自分のライターが切れてたからちょっとした儲けもんだろう。

「これ今回のファイトマネーな」

  持ち主の前で使ったライターをチラつかせ自分のポケットに仕舞い込んで煙を吐きながら俺はその場から退散した。

「この……戦闘狂めッ…!!」

 ライターを奪われた事は然程恨みはしない。
 ただいつかこの借りは必ず返す、まるで怨念のようにそのモブは辛の後ろ姿を睨む。

  字数が稼がれた所で話をもとに戻そう。

  俺に友達はいない、在籍している高校がワルの巣窟ということもあり先ず世間体からは疎まれ普通に友人を作るということが出来ない。
  ならば校内で友情を育めばいい。
  確かに不可能ではなかったかもしれない。
  ただ今となっては後の祭りだろう、その理由はさっきの他校の生徒のセリフが一言で代弁してくれた。

 “番長をやった奴”

  番長というのは言うまでもなく不良高校で番を張りワル共を統括する学校内のリーダーのことだ。例外も無くはないが大抵は3年生、つまりは先輩がなるもの。

やったと言うのも説明なんて要らない、そのままだ。
  別に喧嘩番長のように入学早々にタイマンを申し込んだわけではない、そもそも喧嘩が強いことは自負はしているけれどもだからといって勢力を作ったりなどにはまるで興味がなかった。

  では何故そうなったのか、単純言えばこうだ。
ある日、自分の同じ制服の生徒が別の学校の女子生徒に執拗にナンパをしておりウザかったためその同じ制服の男をブチのめした、だ。
そしてブチのめした相手がなんと番長だったという話だ。

  女癖が悪いが人と後輩の面倒見が良いと評判だった番長という事。
自分のぶちのめし方が我ながらとえげつなかったという事。
そして更に校内での統率が崩れ色々と収拾が付かなくなったという事。

これら全ての理由で校内の様々な生徒から喧嘩を売られるようになった。

 ある時は次期番長を狙う2年生のグループ。
 またある時は番長を慕っていた親衛隊と呼ばれる直属の精鋭の兵隊。
 またまたある時は名を売ろうと考えた1クラス丸々の1年生の集団。
 事の発端から今日まで4ヶ月近くは経ったが、全ての喧嘩相手をブチのめして暴れに暴れまくった為にもう誰かと友情を育むどころでは無くなったのだ。
  まだ敵討ちを考え喧嘩を売る輩もいるけれど俺はもはや校内では恐怖そのものに変わっていた。

「別に喧嘩したくてしてるんじゃねえし」

 タバコの煙をぷかぷかと吹かせながら自販機の前に立ち小銭を入れた。

「ぜってぇ生まれる時代間違ったし」

 というか世界も間違えたかもしれない。そう思いながら自販機から注文したお汁粉がゴトッと音を立て俺はそれを取り出した。

「…」

 お汁粉を開けようと指を掛けようとしたがそれを中断して目の前の光景に向けて缶を振り被った。
 
「あの…や、やめて…下さい」
「ひ…人を呼びますよ?」
「いいじゃんいいじゃん、ちょっとお茶しよーって言ってるだけじゃん?ちょっとそこまで」

 俺の視線の先には2人の女子校生を無理やりナンパしようとしている不良。
 制服はもちろん俺が来ているものと同じ、つまりは同学年か先輩か。

無視をすればいいものをまた俺の中の謎の衝動に駆られた。
そして思考の前に行動を起こす。

 距離は多分20メートルぐらいだが問題ない、マウンドからホームベースの距離だって18.44メートルなのだ、プラス1メートル半の誤差なんて瑣末なもの。

 ーよそ見さえしなけりゃだいたい狙ったところに行くもんだ

 ピッチャー経験は勿論、そもそも野球の経験なんてない。
 けれど何の迷いもなく俺は振り被ったお汁粉の缶を投げた。
 120㎞程は出ているであろうその豪速球(というか豪速缶)は2人の女子校生の頭の間を抜けながらナンパ男の額にめり込んだ。

 急な出来事に男は悲鳴を上げずに後ろに倒れた。プロ野球で使う硬式の球ではなくただの缶だ、中身が入ってるとは言えデッドボールを喰らうバッターよりもダメージは少ないはず。
 いきなり倒れ何事かと短い悲鳴を上げながら女子高生の2人が缶が飛来した方を見た。

「………」

 男の意識を刈り取った俺は投げたお汁粉の缶を回収する為に2人の女子高生の視線を無視して男に歩み寄る。
 丁度咥えていたタバコが短くなりそれを足元へ落として火を消した。

「ナンパがしたけりゃ他を当たれ」

 不愉快だと付け加えながらお汁粉を回収しながら缶を開け俺はそれを一気に飲み干す。
 そして空になった缶を近くにあるゴミ箱へ投げ入れる。

 倒れるナンパ男を一瞥しながら2本目のタバコを咥え火をつけようとする時、自分の背後で慌てて駆け出した2人分の足音が遠ざかって行く。
 振り返るまでもない。
 普通の女子高生なら俺みたいな男が現れれば十中八九逃げ出す。
 例えそれが人助けであったとしてもだ。

 別に女子高生だったから助けたわけではない。
 見返りか礼を求めていたわけでもない。
 自覚もなければ自負もしてない正義感のようなものが突き動かしているだけだ。
個人的には少なくとも悪業ではないと信じてる。

 とはいえ俺の心に退屈と共に虚しさが漂っているの事実だった。

「…帰ろ」

 心の中で退屈と虚しさが踊っている俺はもう外を出歩く気が失せ、真っ直ぐ家に帰ろうと自宅へ足を向けた。

「…へえ〜」

 帰路につく辛の後ろ姿を眺めながらフードを被った人物が感心するように声を漏らした。

「ちょっとテストしてみようかな」

 フードを被っている為に顔は見えない。
 ただその口元は間違いなく笑みが浮かんでいた。

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