【ラノベ感想】フルメタル・パニック! ずっとスタンドバイミー[下巻](※ネタバレ解説)

【ラノベ感想】フルメタル・パニック! ずっとスタンドバイミー[下巻](※ネタバレ解説)

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ネタバレがあります。 そして、あくまで、個人的な評価感想です。

感想
感想を率直に申し上げると、終始盛り上がりっぱなしのイメージでした。
 
中だるみもすることなく、息もつかせぬ面白さで、読んでる方が面白すぎて呼吸困難なくらいのいい出来の作品でした。
 
このフルメタルパニックという作品は、あとがきにも綴られてましたが、あくまでも、
 
『ボーイ・ミーツガール』
 
彼と彼女を中心としたお話で有り、戦闘、戦争などを中心として伝えたかった作品ではないと、原作の賀東招二先生も申しておりました。
 
主人公相良宗介という一人の人間を、非常にリアリティある描写で、本人が『人殺し』であるという、汚いところなども、しっかりと隠すことなく描写していて、それに対する人間的な心の部分を、本人の問題点として掲げ、最後にARX-8(レーバテイン)総称ーーアルの機内の中で学校の生徒達の映像に宗介が涙するシーンは、不完全であった心の変化や成長を感じ、そこに大きなカタルシスを感じました。
 
宗介をアルの意思によるラムダドライバ発動で、メリダ島の大規模爆発から、本人を救ったという描写も、アルというロボット自身が、まるで機械を超えた人間に近づけたような感じがしたので、そこも感名を受けました。
 
アルの宗介に対する最後の質問で
 
『私は人間ですか、機械ですか?』
 
その質問に対し、宗介の放った言葉は。
 
「自分で決めることだ……。人間はみんな……そうしている」
 
この一幕のやりとりに今回の宗介の問題点に対する一つの終着点なる答えが含まれていると思いました。
人間は自分の心で、その気持ちを決め、それに対する行動を決定している。
アル自身も、サックス中尉の死に対し、いたむ思いがあるなどの複線描写を通じて、人間的な側面を垣間見ることができました。
 
このフルメタルパニックという作品の相良宗介という一人の年頃の主人公を、任務のために、仕方なく戦わざる負えなかったという境遇のなかで、構成されてしまった心の問題点を改善していきながら、成長していったというところに、私は大きな感動があると思います。
 
宗介は、人が心を持っていて、その意味や決断を、自分自身の心が最終的に決めるのが、人間であり、俺自身なんだということに、気づいたし、その事を相棒のアルに、最後に言い放った訳だと思います。
 
人間とは、心とは、人の弱さ、儚さ、それらを無視することなく、丁寧に描写したこの作品は、本当に学園ミリタリー小説の中では群を抜く名作だと私は思います。
 
個人的に一番好きなシーンの印象深い場面は、やはりあの『カリーニン VS 宗介』の肉弾戦です。
 
ナイフのみの、地味でシンプルな戦い描写でしたが、なにより凄いと感じたのはそのセリフです。
 
特に、カリーニンが言い放ったセリフの
 
『私を……無敵の男だとでも思っていたのか?』
 
「親父というのはそういうものだろう!?」
 
このやり取り。
 
凄く印象に残りました。使っている言葉じたいは簡単な言葉かもしれませんが、これだけ、簡潔にかつこの場面で、自分にとって親父とはどういう存在か、および、カリーニンのことを本当に父親のように思っていたことが、伝わるセリフはありません。
 
読者の方々も、共感出来た人は多いと思います。
 
宗介にとっての、大きな背中に映ったカリーニンという父親的存在。
 
我々読者自身が、世間一般的に父親に対して、感じている大きな存在感。
 
いつだって、父というものは、絶対的圧倒的存在に見え、この戦闘の戦火の灯が消えようとしている場面でも、『そういうもの』という同調表現には、キャラクターにも我々の私生活にも共感できる、そんな表現だったと思います。
 
そして、最後の校庭でラブラブなキスをする場面。
 
ハッピーエンドで、フルメタ一期のオープニングが脳内で流れて来そうなそんな感覚になりました。
 
『君さえいれば、武器などいらない』
 
宗介のこれまでの、戦わざるおえなかった、戦うことこそが生きることそのものであり、人に必要とされ、生活していくための、行動手段であったという立場から、
 
千鳥かなめという、自分にとってかけがえのない、愛するべき女性さえいれば、もう戦う目的も理由もなくなり、ただの青春まっさかりの一人の平和な男の子に変わった。
 
そしてこれからも、そういう平和で幸せな日々が続いていくんだという、そんなことを思わせるセリフですね。
 
私からの評価は、オススメ度はMAXです。
 
ネタバレ感想でしたが、この作品を知らない方には、是非とも勧めたい思い出の一冊でした。
 
 




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